20年近く行政営業で生計を立ててきた身として、OJTの中で自然と学び「当たり前」のこととして実践していることがたくさんあるのだな、と気づかされることがあります。
その最たる瞬間は、自治体営業を始めたばかりの企業様とお話しているとき。
思わぬ「つまづきポイント」がたくさんあることに気付かされます。
そんなつまづきポイントの中から、今回ご紹介するのは、「自治体へのアポ電の失敗事例」です。
次のようなアポ取りは、失敗すべくして失敗しています。
なぜダメだったのでしょうか。どうすればよかったのでしょうか。
その理由を解説してみましたので、参考にしていただければ幸いです。
【ダメなアポ取り その1:事前準備不足】
「観光PRサイトを運営しています。自治体に広告記事を出稿してほしいけど担当部署がわからないので、代表電話にかけてみたら、「担当部署はわからない」と言われました。体のいい断り文句ではないのでしょうか?」
→いいえ! 代表電話の窓口の方は、本当にわからないのです。
自治体の中には何十という課があり、それぞれ似て非なる事業をやっています。
「貴自治体をPRしたいので、担当部署につないでください」なんてアバウトな問い合わせだと、該当する課は数十にのぼるので、どこにつなぐべきか本当にわからないのです。
アポ取りの段階で、もっとスコープを明確にしましょう。
例えば「観光入込み客数を増やすために、観光情報誌への掲載を案内しています。観光担当の部署につないでください」とか、「農産品のブランド化のメディアを発行しています。体験農業で関係人口の増加を提案したいので、農業観光の部署につないでもらえますか?」など、具体的に伝える必要があります。
【ダメなアポ取り その2:ターゲットを間違えている】
「弊社の紹介をしたいので、お時間もらえませんか?」
「部長が変わったのでご挨拶に伺いたく、お時間ください。」
「職員の負担軽減やコスト縮減に効果的な弊社の製品を紹介しに伺いたいです。」
→あちゃー。これは、「自治体営業のターゲットは誰なのか」を全く理解していないアポ電の例です。
市民への行政サービスに忙しい自治体職員が、なぜあなたの企業のために時間を割かなければいけないのか、説明が足りていません。
自治体にアポ取りする際は、「自社のサービスが、地域住民の課題解決にどのように役立つのか」を伝える必要があります。
なぜなら、自治体職員は地方公務員法により、「職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」という義務を負っているからです。
住民のためにならない効率化やコスト縮減には、一切の関心を持っていません。
本心では効率化したいと思っていても、予算を獲得する理由として「自分たちが楽になるため」とは、口が裂けても言えないのです。
なので、自治体職員へのアポ取りのセオリーは、「住民や地域企業にとって、こんないいことがあります」というアウトカムまで示すことです。
実際には自治体職員の労働負荷を減らすための商材であったとしても、「職員の負荷が減ったことにより、住民に対峙する時間が増えます」「職員が新たな学びの時間を獲得でき、新しい市民サービスを生み出せます」など、『労働負荷が減った結果、何が起きるのか」まで伝えなければ、その商材が選ばれることはありません。
自治体への営業を考えるとき、そのターゲットは「自治体職員」ではありません。
自治体職員が奉仕する「地域住民・企業」です。
自治体のメリットをいくら訴求しても、のれんに腕押し・なしのつぶて。
もしそう感じることがあったら、ぜひ「自治体職員の向こうにいる市民・企業の課題は何なのか」「その人たちの課題に、自社はどう貢献できるのか」を考えながらコミュニケーションしてみてください。
きっと、驚くほどスムーズに商談が進むと思います。
ご検討をお祈りしています!
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