公民連携に携わる方なら、「サウンディング調査」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。
公民連携プロジェクトの条件を検討する際、その条件が本当に実現性のあるものになっているか確認するため、実際のプレイヤー候補である民間企業の意見を聞く手続きです。
国土交通省が調査の手引きを公表して以来、ほぼすべての案件で必須のプロセスになってきました。
○地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き
この調査の対象企業の選び方は、ホームページでひろく参加者を募る「公募」と、類似事業の実績を持つ企業を自治体が抽出して個別に依頼をかける「非公募」の両方ありますが、よくあるのが「自治体から個別にサウンディング依頼があったのだけど、対応すべき?」というご相談です。
私は自治体側アドバイザーとしてサウンディング調査を行う側に立つことも多いので、案件獲得から見たサウンディング調査対応のメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
まず、サウンディング調査って何?
サウンディング調査とは、国交省の手引きで以下のとおり定義されているとおり、自治体が事業化を検討するための情報収集であり、民間企業に関心を持ってもらうためのツールでもあります。
サウンディングは、事業発案段階や事業化検討段階において、事業内容や事業スキーム等に関して、直接の対話により民間事業者の意見や新たな事業提案の把握等を行うことで、対象事業の検討を進展させるための情報収集を目的とした手法である。また、事業の検討の段階で広く対外的に情報提供することにより、当該事業に対する民間事業者の理解の促進や参入意欲の向上を期待するものである。
(出典:地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き 概要)
サウンディング調査の情報を収集・公表している会社もあり、ほぼ毎日全国で数件のサウンディング調査が実施されていることがわかります。
〇PPP/PFI情報 一覧
サウンディング調査のメリットとは?
サウンディング調査を実施する自治体の思いとしては、まだ公表されていない検討段階の事業情報を企業側に提示し、企業側の意向を踏まえて参画可能な条件へと修正することで、より多くの民間企業から良い提案を引き出そうというものです。
このため、サウンディング調査に協力した企業だけが、超上流の事業情報を入手することができます。
また、もし自社にとって不都合な条件が盛り込まれそうな場合は、条件変更を要望することもできますし、自社にとってよりよい参画条件となるよう提案することも可能です。
さらに、サウンディングという公式な手続きを経て収集された情報は、自治体側も一定の配慮を行うため、通常の営業活動で担当課を個別訪問して自社のアピールをするよりも、自社の要望・提案が通りやすくなります。
私の自治体側アドバイザー経験でも、公民連携事業で名の通った常連企業は、サウンディング調査の依頼を断ることはまずありません。サウンディングで得た上流情報をもとに早期の事業検討を行いつつ、自社の要望を自治体に伝えて有利になるよう仕掛けをしています。
サウンディング調査にデメリットはないの?
このように、サウンディング調査はいいこと尽くしに見えますが、デメリットもいくつかあります。
例えば、提出資料が膨大になる場合があり、対応に時間とコストを取られることです。
特にハード整備を伴う事業では、サウンディング時の提出資料にイメージパースを求められることもあり、かなりしっかりと検討しなければなりません。
当然、これらの費用はすべて企業側負担です。
また、事業の上流段階になるほど、案件化のスケジュールが不確定になります。
時には10年先の事業について意見を求められることもあり、事業そのものが無くなってしまう可能性もあります。しっかりと時間とコストをかけて対応しても、無駄骨になるリスクがあります。
答え
ここまで見てきた通り、サウンディング調査にはメリット・デメリット両方がありますが、事業化の確度が高い案件の場合は、メリットの方が多いといえます。
そのため、答えは
「B:積極的に対応する」
です。
最後に「事業化の確度」の見極め方ですが、一番簡単な方法は、自治体の上位計画や公共施設等総合管理計画などで『重点事業』と位置付けられているかどうか確認してみることです。
もし『重点事業』になっていなければ、サウンディング調査の依頼を受けたタイミングで、事業化(または公募)スケジュールをざっくりと聞いてみるのも有効です。
事業化(または公募)が「3~5年後」であれば取り組む意義はありますが、「未定」や「10年後」などの回答があった場合は、見送る選択肢もあると思います。
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