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  • mican3

【旬の話題】横浜市が、予定価格を開示して入札する仕組みを導入したって!?

建設系のニュースを見ていると、入札の不調不落が増えているようです。


不調とは、開札したときに落札者がなかった場合をいい、不落とは、開札したけれど予定価格に収まる応札者がいなかった場合をいいます。


不調不落の原因は様々ですが、特に資材価格や人件費が原価の過半を占める建設工事では、最近の急激な物価高騰や外国人材などの人手不足により、積算時の価格から大きく乖離していることが主な要因と考えられます。


通常は、工事の内容を変えて(おもに工事内容を減らして)予定価に収め、再公告することが多いです。これに対して横浜市では、工事内容を変えずに予定価格を公表し、再公告する仕組みを導入するとのこと。


つまり「この金額で、この工事ができる人を募集します」ということです。



予定価格と実勢価格があまりにかけ離れている場合や、公共工事に慣れていない事業者を対象にする場合などでは、いくら工事内容を変えて公告したところで、金額がすりあってきません。それならいっそ、手の内をすべてさらしてしまおう!というこの発想。


コロンブスの卵のようなアイディアですよね。


再入札の手順は以下の通り。まず、1回目の入札の後に、市が予定価格を記載した書面を全入札参加者に送付する。参加者のうち再入札の対象者には、再入札の入札期間や開札日時などを記した書面を送る。その際、1回目で予定価格を超えた札のうち、最も低かった金額も伝える。 再入札は1回目の入札日から1週間後に実施する。再入札の対象者は入札金額を記載した入札書とともに、その内訳をまとめた書類を提出する。再入札を辞退することも可能だ。

出典:日経クロステック「予定価格を開示して再入札、横浜市が不調の回避狙い新方式」より引用




ですが、公共事業の経験がある方なら、いろいろと気になる点も出てくるとおもいます。


まずは落札価格が高止まりするのではないか、という点。

これについては、そもそも予定価格が適正価格ではないという点(実勢価格よりも安すぎる水準)に問題があり、不調が発生していることを考えれば、問題になるとは言えないでしょう。


次に建設業者の見積もり努力を損なわせる可能性がある、という点。

ここは悩ましい問題だと思いますが、すべての工事の予定価格を事前公表するわけではなく、不調になった一部の工事に限定するのであれば、見積能力の低下を招く恐れは最小化できるのではないかと思います。


最後に入札談合が容易になるのではないか、という点。

こちらも悩ましい問題ではありますが、そもそも不調不落の案件で業務内容を変えずに公告するということは、各社採算が合わない金額であるはずなので、この条件で談合しても誰も得をすることがありません。



予定価格の事前公表については、適正な競争の妨げになるとの懸念があることから、総務省は「原則、事前公表はNG。ただし特段の事情がある場合には実施の適否について判断のうえOK」という通知を出しています。


今回の横浜市が導入した不調不落後の予定価格事前公表方式も、この「弊害が生じることがないよう取り扱う」という方針にのっとり、『予定価格オーバーで落札者がいなかった案件に限定し、入札に参加した企業に限定して、事前の価格公表を公表したうえで再入札する』ことで、という整理にしたようです。





公共調達の世界は奥深く、魑魅魍魎渦巻いているため、様々なルールが網目のように張り巡らされています。理解することすら放棄したくなるほど複雑です。


ですが、行政のパートナーを目指すうえで、行政職員がどのようなルールに縛られているのか理解することはとても大事です。


このようなニュースが出てきたタイミングで、少しづつ理解を深めていただけたらと思います。



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