SDGsへの注目の高まりを背景に、自治体ビジネスに新たに参入しようとする企業が増えています。これらの企業が取り組む分野は、自治体にとっても比較的新しい分野であることが多く、契約相手を「プロポーザル方式」で選定することが多いと思います。
このプロポーザル方式、実は金額だけで決まる「入札」との最大の違いを理解していなければ、まず勝つことはできません。
プロポーザルで失注を続ける企業の多くが、「仕様書通りに提案したのに非特定だったけど、なにがダメだったのだろう?」「事前営業していた企業が優遇されたに違いない」という言葉を口にするのを耳にします。
でも、これって本当でしょうか?
実は、プロポーザルの勝率を上げるためには、絶対に忘れてはいけないお約束があります。それは、「仕様書通りに提案したら勝てない」ということ。
仕様書通りに提案したら勝てないのが「プロポーザル」
実は、「仕様書どおりに提案したらプロポーザルでは負ける」のです。
選定された企業は、「仕様書に記載された業務内容をどのように改良すればいいのか」「仕様書に書かれていない業務で追加すべきものはないか」をしっかりと考え、提案しています。
その理由は、「プロポーザルでは仕様書が未確定であり、提案を基にアップグレードするもの」だということを知っているからです。
「公募後に仕様書を変更しても問題ないの?」
このような疑問が出てきた方は、自治体営業の上級者だと思います。
結論としては「プロポーザルだからOK」なんです。
プロポーザルは随意契約の一種であり、契約の相手方を決めるための方法として、企画競争を行わせているにすぎません。
相手にあわせて仕様書を変更することは、随意契約ならどこでもやっていることでしょう。
この点が、仕様書をがっつり固めて金額を競わせる「入札」との違いです。
金額だけで勝負する入札の場合、もし仕様書を変更してしまうと、積算の元となった条件が変わってしまうので、入札金額の妥当性が危うくなり、公平な競争だとは言えなくなります。
他方、随意契約の一つであるプロポーザルでは、最も評価された提案者の提案内容を仕様書に反映するだけなので、公平性の問題は発生しません。
仕様書の変更を前提とした公募が可能になるのです。
プロポーザルにするメリットは?
発注者にとって、仕様書を固めずに公募することは怖くないのでしょうか。
自治体が思い描くような業務をちゃんとやってくれるのだろうか、と不安になることはないのでしょうか。
そのような疑問も浮かんできますよね。
ですがそもそもプロポーザルになる業務というのは、自治体の業務委託の中でもかなり特殊な部類の業務なのです。
国土交通省が公表している「プロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」によると、プロポーザル方式が採用されるのは『業務の内容が技術的に高度または専門的であり、提案書に基づき仕様を作成する方が優れた成果を期待できる業務』となっています。
つまり、発注者が考えつかないような良いアイディアを企業が持っており、それを引き出す方法としてプロポーザルを採用していると言えます。
逆に言えば、仕様書通りの提案をしてしまうと、発注者にとって「わざわざプロポーザルにした甲斐がない」ということになります。
プロポーザルで大事なのは、発注者と同じ立場で業務に向き合う姿勢
発注を担当する職員にとって仕様書とは、「地域課題を解決するための設計図」でもあります。
どんな業務内容にすれば目の前にある地域課題を解決できるのか、担当者なりに知恵を絞って設計図を描くのですが、当然これまでの経験の延長でしかアイディアが出てきません。
本当にこれでよいのか悩んだ末、より良いアイディアを求めてプロポーザルを採用するのです。
このような状況を理解すると、おのずとプロポーザルに参加する企業が意識すべきポイントが見えてきます。
それは、自治体担当者と同じ目線に立ち、どうすれば地域課題を解決できるのか、自分たちなりのベストなソリューションを提案すること、です。
発注者・受注者のような甲乙関係ではなく、同じ課題に向き合うパートナーとして「今、何をやるべきか」を、自治体の置かれた状況も加味して提案することが必要です。
プロポーザルの常勝企業は、これらのことを心得ているがゆえに、自治体の強力なパートナーとなり、その結果多くの自治体から信頼を勝ち得て数多くの案件獲得ができていきます。
プロポーザルに参加しようとするとき、ぜひ次の言葉を頭の中で問いかけてみてください。
「この提案は、発注者が抱えている課題に寄り添えているだろうか」
「発注者の困りごとを、どの程度解決できるだろうか」
これらの問いに答えていけば、次第にプロポーザルの勝率も上がってくると思います。
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